「ブラックサンダー」といえば、誰もが一度は食べたことがある国民的チョコ菓子。
そのブラックサンダーが仕掛けた 「ブラックサンダーエクスチェンジ」 は、第10回「販促会議 企画コンペティション」で グランプリを受賞し、マーケティング界隈で大きな話題を呼びました。
この施策の何が天才的だったのか?
実は、単なるお菓子のプロモーションにとどまらず、
- 生活者インサイトの発掘
- 商品特性を活かした戦略設計
- 体験型マーケティングの巧みな応用
といった、企画担当者なら必ず押さえておきたい成功要素が凝縮されています。
本記事では、ブラックサンダーエクスチェンジの事例を徹底解説し、そこから学べる マーケティング戦略の本質と応用ポイント を紹介します。
「話題になる企画をつくりたい」「成功事例からヒントを得たい」という企画担当者やマーケターの方は、ぜひ参考にしてください。
コンセプトの魅力とは?
- “小銭”というニッチな課題を起点にした発想
訪日外国人観光客が余ってしまう日本円の小銭を、「ブラックサンダー」という少額チョコと交換できる仕組みとして“両替”体験に変換。空港という非日常空間を活かした、ユーモアと実効性のあるアイデアでした。プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMESkick.co.jp - ブランドと体験を掛け合わせた巧みな設計
「世界中で愛されるお菓子に」というブランド目標と、“エクスチェンジ(交換)”という体験型プロモーションを融合させた点が、審査員から高く評価されました。Senden Kaigiアドタイ
企画の背景と評価ポイント
- 応募数は過去最多!厳しい競争を制す
第10回は29社からの課題に対し、応募総数は4,088本という過去最多。そんな中で栄冠を掴んだのは、まさに“一目置かれる発想”だったからこそ。Senden Kaigikick.co.jp - 審査員からのコメント
審査委員長・嶋浩一郎氏は「シンプルで話題化が狙える」「世界中で愛されるお菓子に合っている」と高評価。アドタイkick.co.jp
企画者からは「“面白く、人を動かすプロモーション”を目指した結果、このアイデアにたどり着いた。大好きなブラックサンダーで応募した企画が評価され嬉しい」とのコメントも。Senden Kaigi - 協賛企業・宣伝会議としての見解
協賛企業であるカルビー(野堀和哉氏)は、「荒削りでも斬新な企画を」と期待し、その期待に応えた企画として大変喜ばれていました。プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES
学びになるポイントまとめ
項目 | 解説 |
---|---|
ターゲットとシチュエーションの掛け算 | 訪日観光客が“困っていること”を、ブランド体験に変える発想 |
少額アイテムの活用 | 低価格な商品だからこそ“交換物”として成立し、心理的なハードルも低い |
体験の提案性 | 両替という体験を通じてブランドへの接触機会を自然に作り出す |
クリエイティブ×実現性 | 面白さと実行可能性(feasibility)が両立された企画である点 |
こうした企画が魅力的なのは、「ただ面白い」だけでなく「実際に人の行動を促す設計」になっているからこそ。消費者にとって有益で、ブランドを好きになってもらえる時間設計がされている点が素晴らしいですね。
1) 何が天才的だったのか(=再現可能なエッセンス)
訪日客が出国前に余らせる日本円の小銭という“価値はあるが使い道がない資産”に着目。空港という文脈で交換(Exchange)=ユーティリティ提供に変換しました。空港には「余り通貨を別価値に替える」実需(例:電子マネー化・ポイント化)も存在し、行動の土壌がすでにあるのがポイント。羽田空港旅客ターミナル
ブラックサンダーは低単価・常温・個包装・味で外さない=交換の“通貨化”に最適。サンプリングの心理抵抗ゼロで、空港という待ち時間の長い場所で掲示・設置効果も最大化できます。受賞レポートでも、現場文脈と体験の合致が高評価の背景に。アドタイ
「Exchange」という機能語+行為をそのまま企画名化。外国人にも通じ、口頭伝播しやすい(“空港でコイン→チョコとエクスチェンジ”)。結果、話題化とPR適性が高い。
“1個=32円レートで交換”という明快かつフェアな設計(例)。消費者は廃棄コストの回避+小さなご褒美を得て満足し、ブランド側は原価に基づくコントローラブルな獲得コストに落とし込める。s-modern.com
第10回「販促会議 企画コンペティション」グランプリ。応募4,088件の中で頂点=審査基準(話題性×実現性×戦略整合)を満たす証拠。アドタイプレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES
2) 企画に落とすフレーム(すぐ使える設計図)
A. インサイト発掘(Stranded Value Map)
消費者が「使い切れない」「余って困る」と感じる資産=Stranded Valueを見つけ、それをブランド体験に転換する視点は応用可能です。
例)小銭・期限間近のポイント/クーポン・イベントの余席・端数時間・B品・サンプル在庫 など
「空港(場所)×出国前(時間)×低単価菓子(商品特性)」の掛け算が、この企画を成立させた大きな要因です。
例)空港/駅の出入口・会計直後・退場直前・期末・引っ越し前 など
“軽い幸福+体験接点”を両立(試食、限定体験、トライアル権、コミュニティ参加 など)
「1本=32円」など、消費者にとって“得した感”があり、かつ企業側のコストもコントロールできるレート設定が重要です。
「Coins → Chocolate」という矢印を使ったビジュアルだけで理解できる直感的なクリエイティブは、グローバルな空港利用者に最適でした。
B. 場所×時間×商品特性のスコアリング
- 場所(必然性・回遊・滞在)× 時間(待ち・締切・直前)× 商品特性(低単価・携帯性・即時消費)を3点法で採点し、総合点が高い面から実装する。
C. レート/単価の数理(ざっくり式)
- 交換レートの上限 ≒ 目標CPA -(運営コスト+機会費用)
- 1接点あたりの期待リフト=(交換→試食→SNS/購入への遷移率)× 平均単価
レートは**“得した感”>“赤字感”になる閾値をABテストで探索。
※ブラックサンダー事例の32円/個のように1枚看板で伝わる数字**に落とすのがコツ。s-modern.com
D. クリエイティブ/多言語設計
- 機能語+ピクト:「EXCHANGE / COINS → CHOCOLATE」
- 3秒で理解できるビジュアルと導線(矢印→ブース→受け取り)。
- 空港等では多言語最適(英/中/韓+数字訴求)。空港文脈での両替行動は一般的=受け入れハードルが低い。羽田空港旅客ターミナルジャパン・トラベル
3) KPI設計(“行動”で測る)
- Reach:ブース前通行量/掲示視認数
- Engagement:立ち止まり率、交換率、平均交換枚数
- Experience:満足度、SNS投稿率(#exchange などタグ指定)
- Business:当日/空港内購買率、ブランド想起のリフト、地域/国籍別の再購入指標(ECクーポン回収で追跡)
- Unit Economics:CPE(Cost per Exchange)、CPT(Cost per Tasting)、CPi(Cost per install/会員登録) 等に換算
4) 他業界・自社に“そのまま”移植するアイデア
- リテール:レジ横で**“端数ポイント→ミニ菓子/試供品”**エクスチェンジ
- モビリティ:交通系ICの端数→ドリンク割引(自販機/駅ナカ)
- SaaS/B2B:**未開封リード(古い名刺)→トライアル延長
- エンタメ・イベント:退場ゲートで未使用ドリンクチケット→推しキャラ限定缶バッジ交換
- 飲食チェーン:閉店前の余剰パンやスイーツを**“端数現金/ポイント→持ち帰り”**形式で提供(フードロス削減×来店体験)
- 観光地・自治体:観光案内所で余った地域通貨→ご当地おみやげ交換(帰国前/帰宅前の立ち寄り導線)
5) マーケティング的な学び(汎用化ポイント)
本質要素 | ブラックサンダー事例での実装 | 他企画への応用視点 |
---|---|---|
インサイト発掘 | 小銭の余り=困りごと | 余剰資源・端数・期限切れ間近の価値を発見 |
文脈適合 | 空港での“両替”ニーズ | 利用シーンとニーズが一致する場所選び |
商品特性の一致 | 低単価・常温・個包装 | 交換物は心理的負担ゼロの小さな贈り物 |
ネーミング設計 | “Exchange”で行動を直感化 | 行動+価値を一語で伝える命名 |
実現性と話題性の両立 | 実際にブース設置可能・PR映え | 物理導線+SNS映えの両方で設計 |
営業とマーケティングの役割の違い

6) なぜ企画の参考になるのか(結論)
- 生活者の“小さな不便”を起点にすると、高確率で共感と話題を生む
- 商品特性を文脈にピタッとはめると、無理なく行動が起きる
- 交換や転用の体験化は、ブランド接触を“感謝体験”に変える
- 低単価の資産を高感度の広告接点に変える設計は、ROIが高く再現性もある
- ネーミングや導線設計の直感性が拡散スピードを左右する
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